ワシ流、係活動

教諭として

 係活動は、学級経営の重要な柱の一つと考えています。多様な個性・特性をもつ子供たち一人一人が、自分らしさを発揮しながら、より良いクラスづくりに主体的に参画しようとする姿は、未来の頼もしい社会人への成長につながっていくと信じているからです。今回は、ワシの係活動に対する考え方や実践を紹介したいと思います。

iPad版illustratorの練習を兼ねて、作成したご褒美メダル。明日、教室の係ポスターに貼ってあげます。

係活動を重視する理由

 ワシが小学校5年生だった頃、担任が話してくれた話です。ご自分の教え子のことか、息子さんのクラスのことか忘れましたが、学級新聞の制作に燃えている子の話でした。その子は、控えめで目立たないタイプだったそうですが、漫画を描くことが好きで、学級新聞係として連載の4コマ漫画を描き始めたところ、それがクラスで大人気となり、その子もクラスも大いに活気づいたという内容でした。漫画のタイトルは「100万円と子どもたち」。そんなことまで覚えているほど、11歳のワシには、魅力的なストーリーに思えたのでした。

 当時のワシは、すでに”個性的”という言葉が大好きだったように思います。多数が右へ進めば左へ進み、誰もが避けることには喜んで飛びつく子でした。(そう。ただの目立ちたがり屋です)そして、集団の意見やムードがなんとなく同一色、あるいは同系色になりがちなことに、よく違和感を感じたり、不満をもったりしたものでした。ワシが、新聞係の子の話に感動したのは、普段は周りに同調し、自己主張をすることがあまりなかったであろう漫画少年が、個性を発揮してクラスを活気づけ、脚光を浴びたサクセスストーリーが、たまらなくかっこいいと感じたからでした。そして、この感動は、いつしか”誰もが、自分らしく力を発揮し合い、認め合い、尊重し合い、高め合う学級づくり”を重視する学級経営構想に繋がっていったのだと思います。

 このように、30年近く係活動を重視してきたワシが、改めてそのメリットをまとめると、以下のようになります。

  1. 子ども一人一人が、自分らしさを発揮しやすい場である。
  2. 〃、クラスという、最も身近な外の社会に貢献する喜びが得られる。
  3. 担任や親が、教科の授業では見られない良さを発見することができる。

 実際、勉強や運動が苦手な子がヒーローになったり、そんな姿を保護者に伝えて感謝されたことは何度もありました。そしてそんな時は、教師となった喜びをしみじみと噛み締めるのです。

係活動と当番活動は別物

 「当番活動」とは、“誰かがやらなければならない仕事を、輪番制などで公平にこなす活動”です。これに対してワシが考える「係活動」は、“一人一人がクラスの一員として、自分の好きなことや得意なことを活かして役に立てることを考え、同じような目的や個性をもつ仲間と協力して、主体的に取り組む活動”です。

 低学年では(1年生をたった1度だけ経験しているだけのワシが偉そうなことは言えませんが…)、「当番活動」=「係活動」でよいと思います。なすべきことがはっきり分かっていることを、ちゃんとやり続けることで、所属感や自己有用感を育てることが大切です。しかし、これだけでは、上記のような素晴らしいメリットを享受することができません。ですから、高学年になるにつれて、“誰がやっても同じ(考える必要のない)仕事は当番(または、平等分配)制で行い”、”係は、自分らしく役立つ方法を、自分で考えて創設する”ものと、考えるようにしていくべきだと思うのです。

 現在ワシは、4・5年複式学級の担任ですが、「電気を消す」「黒板の管理」「授業で必要な動植物の世話」などは、教科係(これも当番活動の一つ)とか日直、あるいは気づいた者が行う仕事です。もちろん、係の仕事に関連性が高い場合は、このような仕事を係活動として担うことはありますが、これはあくまでもついでの仕事なのです。

 このことに気づくのには、数年を要しました。さらにその後、”アントレプレナー教育”なるものに出会い、合い通じる多くの点に感動も覚えましたが、”起業家が社長としてメンバーを募る”というのには、ちょっと違和感を感じたので、この手法でガッツリ実践したことはありません。

これまでに生まれた係例

<情報係>

 世間で話題のニュースから、地域や校内、学級など、ごくローカルな情報まで、とにかくクラスメイトの好奇心を満たしたり、役に立ったりする情報を、朝や帰りの会で発表することを使命としていました。

<絵日記係>

 イラストの得意な子が、クラスの思い出となるような出来事を絵日記風に記録して、どんどん貼っていく係を考えました。教室の壁に並んでいくと、それが学級文化となり、係がえをしても必ず後継者が現れて1年間続きました。

<DIY係>

 「工作は好きなんだけど…」と言う子に勧めたところ、「おもしろそう!」と何人かが集まりました。コロナ禍に、非接触型の消毒ポンプづくりを思いつき、悪戦苦闘してなんとか完成させた時は、大変盛り上がりました。

「係評価会」のススメ

 これを思いついたのは、教職暦15年以上となってからです。はっきり覚えていませんが、アントレプレナーシップ教育からヒントを得たのかもしれません。

 簡単に言えば、各係活動の取り組み具合や成果を、自分たちで相互評価する取り組みです。評価の観点は、「努力」、「アイデア」、「貢献度(お役立ち度)」の3つ。全員が、全ての係の3観点評価を書き込むシート(上の画像のようなもの)を持ち、それぞれの”アピール”を聞いて、観点ごとに3段階評価を書き込んでいきます。つまり、(クラスの人数)×3が、各観点の満点となり、その3倍が、総合得点の満点となります。1ヶ月に1度くらいの頻度で行いますが、この3観点による評価会と、観点ごとのチャンピオン決定を行うことは、4月の係決めの段階で、必ず説明します。

 狙いは以下の3点。

  1. 自分たちの実践をアピールすることを通して、これまでの活動を振り返り、より良い活動への意識を高めること
  2. 他の係の実践を知ることで、新たな発想や意欲を喚起すること
  3. 評価者を経験することと通して、”みんなにとって良い働き”、”自分らしく活躍する素晴らしさ”についての考えを深めること
  4. “仕事を評価正しくする”大切さや、難しさを知ること

  ”奥ゆかしき日本人的思想”からすれば、”仕事は「認めてもらうこと・褒めてもらうこと」を目的にするものではない”となるでしょう。現代でも、自分の努力や功績を堂々とアピールする人は少ないように思います。しかし、それは間違っているとワシは思うのです。もちろん、褒められることだけを求めて、表面だけとり繕ったり、ズルをして評価をあげようとしたりするのは醜いことです。しかし、「すごいね!」「よくやった!」と言ってもらえることを夢見て頑張ることは、人を愛し、人のために働くための、ごく自然で正当なモチベーションだと思うのです。そうでなければ、ワシはあれほど必死に働くことはできなかったと思うし、実際に頑張ったことを素直に表現してきたことを恥ずかしいとは思いません。

 そんなワシの話を聞いた子どもたちは、アピールタイムの準備には必死になります。自分たちが、どれだけ努力したか。どんなアイデアをひねり出し、それがどれだけクラスの役に立ったのか。グループで、相談し、協力をして、具体物を用意したり、熱い演説や、パフォーマンスを考えるのです。そして、努力や実績が乏しいグループは、必死にアピールポイントを考えれば考えるほど、自分たちに足りなかったものを思い知るのです。

相互評価の難しさ

 『係評価会は、競走であって、競争でない』、『他の係は、ライバルであり、仲間でもある』といったワシの話を、人生経験10年ちょっとの子供たちがどこまで理解しているかは微妙です。実際、チャンピオンになるために、自分の係を無条件で満点(オール3)にしたり、ライバルの係の評価を低く書く子もいます。また、仕事ぶりではなく、メンバーの好き嫌いで点数をつける子もいます。しかし、たとえ不当な結果が出たとしても、改ざんなどはしません。前述の、狙いの4番にある通り、それも良い経験だと思っているからです。記名制にして、個別に話をしたこともありますし、誰とは決めつけずに結果の不当性について、全体で考えさせたこともあります。ただ、もう一つ確かなことは、繰り返すことで必ず評価は上手になっていくということです。そして、評価者として成長した子供たちは、実践者としても確実に成長するのです。次の、評価会が楽しみだなぁ!

 

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