グループタスクとしての「ひもぎり式火起こし」のススメ

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「ひもぎり式」とは?

 マッチやライターを使わずに火を起こす方法は、虫眼鏡や火打ち石を使う方法もありますが、多くの人が想像するのは、棒状の木を板状の木に突き立て、高速・高圧で回転させるやり方ではないでしょうか?

 しかし、これにもいくつかの方法が存在します。 

  1. もみぎり式 … 両掌で回転軸を挟み持ち、下に圧力をかけながら繰り返し揉み下ろす
  2. まいぎり式 …「火起こし機」を使う(「ワシ流 まいぎり式火起こし器の作り方 材料編」参)
  3. ひもぎり式 …一人が棒を押さえ、それに巻き付けた紐を別の者が引く
  4. 弓ぎり式  …弓状の道具を使うことで3を一人で行う

 ワシは、「弓ぎり式」以外の方法全てで、実際に火を起こした経験があります。もともと、”もみぎり式は、無理!”と決めつけていたのですが、一度だけ1メートル以上の長い棒を使い、元気で無鉄砲な若者数名と波状攻撃するやり方で成功したことがあります。とても感動しましたが、全員手の皮をむきました・・・

今年制作した「まいぎり式火起こし機」

「ひもぎり式」のメリット

 6月8日にアップした、「ワシ流 火起こし器のつくり方(実践編)」にも書きましたが、、小中学校や青少年対象の社会教育における活動(課題)として「ひもぎり式」による火起こしを選択する最大のメリットは、そこに”必然的な協力・協調・試行錯誤・トライ&エラー・感動が生まれる”という点にあります。もちろん、今年ワシが実践した4・5年生による野外教室でもそうだったように、「まいぎり式」にも十分な教育的効果はあります。(特に小学生では、二人で持ち手を押さなければ火種を作れない場合が多いので、協働作業になる)しかし、”煙を出す”という第一段階に到達するのにも、「まいぎり式」以上の慣れやコツを要する「ひもぎり式」の方が、ドラマを生み出しやすいのです。

 また、”道具の準備が圧倒的に簡単”というのも、大きな魅力です。若い頃は、何日もかけて火起こし機をいくつも作るパワーがありましたが、53歳になる今年は、昔作ったもののリペアが二つと、新作が一つで精一杯。それでも2日(6〜7時間ほど)かかり、疲労困憊でした。。。そこで、以前、家具職人の友人に制作の依頼をしたり、既製品の購入をしこともありましたが、こんな手間は、誰でもできることではありませんし、持続可能でもありません。

 ところが、「ひもぎり式」ならば、棒と紐と板があれば、すぐにとりかかることができるのです。棒をおさえる部分(「押さえ」)には、厚くて丈夫なカップ状のものを使いますが、これも工夫のしどころと捉え、子供たちに考えさせました。火起こし係は、”自分たちが火を起こさなければ、みんなが調理することができない”という使命に燃え、高い競争率を乗り越えて集まったメンバーですから、「押さえ」探しも必死です。知恵と労力を注ぎ込んで、牛乳やヨーグルトの瓶、厚手のぐい呑み、竹など、実に様々なものを試していました。

 

「ひもぎり式」バリエーション

 これは、15年ほど前に学年2クラスの5年部主任として野外教室を行ったとき、火起こし係の自主練(必ず教師はついています)から生まれた、バリエーションです。当時は、発案者の名前をつけて「山田(仮名)方式」などと呼んでいたと記憶していますが、わかりやくす後付けで名付けてみました。

※注意点(イラスト描いてから気づきました。すみません)

 1 「押さえ役」は軍手をするか、タオルのようなもので「押さえ」を持ちましょう。

   (割れることがあります。)

 2 「引役」は、長ズボンか、ももにタオルなどでガードしましょう。

   (先端が熱くなった棒が飛んでくることがあります)

 3 コンクリートなどで練習する際には、布などで置き場所を確保しておきましょう。

   (「押さえ」は割れ物であることが多いため、あわてて置くと割れることがあります)

 また、これは安全上の注意ではありませんが、火種ができるようになったら、切り込みの下に脱脂綿などを敷いて、火種を持ち上げやすくし、「火口(ほくち)」や火を移す場所も、あらかじめ用意しておきましょう。

一人一本両手持ち方式

 だいたい最初に採用されるスタイルです。初心者は、いきなり猛スピードで両手を前後に動かしますが、空回りするか、棒が火切り板の穴から外れて飛んでくるかのどちらかです。慣れてくると、「押さえ」と紐の締まり具合(棒の周り具合)をゆっくり確かめてから、徐々に速くしていくコツを自然に覚えます。

二人一本綱引き方式

 これも、すぐに登場しました。紐の締め具合の調節がとても難しいのですが、3人のリズム・呼吸・力加減がマッチすると、ものすごいパワーを発揮します。良いペアは、前後の動きを大きくすることで効率よく回転させられるようになります。

二人二本両手持ち方式

 これは、想定外のアイデアでした。形としてはイメージできていたのですが、二人の力加減やリズムが揃うはずがないと思い込んでいたのです。ところが、「両手持ち方式」の達人二人が、試しにやってみたら、素晴らしい回転力を生み出し、火種を作ることができました。一時期、ブームとなりましたが、誰にでもできる技ではないと分かり、”特殊技”という認識が定着しました。

「押さえ役」がキーパーソン

 やってみればすぐに分かることですが、もっとも重要なのは「押さえ」です。力を入れ過ぎれば、回転にブレーキをかけることになり、反対に緩めすぎると軸棒が外れて飛んでいってしまうのです。引役とタイミングや呼吸を合わせ、力の入れ方をコントロールする。上手な子になると、相手が気づかないほど絶妙に棒の角度まで調整しており、『やっぱ、”押さえ”はあいつじゃないとダメなんだよなぁ』と引っ張りだこでした。

 道具としての「押さえ」の好条件は、まず「厚くて割れにくいこと」です。厚手の”ぐい呑み”や、理科で使う”にゅうばち”などがいい感じでした。

 次は、「棒に対して程よい大きさであること」です。大きすぎるとぐらつきますし、小さすぎると摩擦を産んで回転にブレーキをかけてしまいます。”にゅうばち”は、厚さは申し分ないのですが、結局は”皿”ですから、棒の安定は今ひとつでした。

 三つ目は、「底が丸みを帯びていること」です。安定感がよく、回転の妨げにもなりにくいからです。

 実は、ワシは陶芸を趣味とする義父に頼んで、理想的な「押さえ」を10個ほど作ってもらいました。(土の代金は出しましたよ)まだ、2回くらいしか活用されていませんが、我ながら良いできです( ^∀^)

 現任校には、SSS(スクール・サポート・スタッフ)が一人いるのですが、彼女は小学校5年生の時にワシが担任をして、一緒に野外教室に行った教え子です。その年は、まいぎり式をやったのですが、先日、今年の野外教室について語っていたら『あー!あれは、一番よく覚えてます!〇〇とずっと練習してましたもん。今年もやるんですね!懐かしい!』と言ってくれました。教師冥利に尽きる一瞬です。いやぁ、火起こしって本っ当にいいもんですよね。それでは、みなさんごきげんよう。サイナラ、サイナラ、サイナラ。。。(分かる人だけ分かってくれればいいや…)

追加画像(唯一無二の手作り「押さえ」)

 夏休みになったので、学校から私物の”火起こしセット”を持ち帰りました。今年は使わなかったけど、上記の手作り「押さえ」の画像をアップしておきます。

 白い方は、100均で見つけたものです。底が緩いカーブの円錐状なのは良いのですが、押さえつける力の方向をコントロールするのにコツがいります。

 茶色い方が、身内に無理を言って作ってもらったもの。火おこし係の子供たちもすっごく喜んでくれたし、使い心地も抜群でした。これだけ厚いと、さすがに割れません。お義父さんグッジョブ!!!

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